狂気を呼び覚ます鮮烈の紅。


俺の体を支配するのはそんな色に似た欲望。



あの花は何故あんなにも狂い咲いているのか









【死人華】











何がそうさせたのか、何があったのか、何がなくなったのか、


気付けば俺達は紅い海の真ん中で抱き合っていた。


深く早い息を紡ぐ、その柔らかな肉を欲情するまま、行為と言うには野蛮で乱暴な愛撫で掻き乱したあの夜。



魔物が囁いた。



「あの花は俺の祖国では死人華と言う。」














倉庫のような薄汚いビルが立ち並ぶこの界隈。

ジッリョネロの島の中でも最も治安の悪い地域だ。

ここに巣くう麻薬密売組織を一掃するために借り出されたのは俺、電光のγと恐れられる瞬殺の雷使いと、

誰がそう呼び出したのか、いつの間にかコードネームごと軽く伝説と化しているこの男。


「それはまた、随分と物騒な名前だな、幻騎士。」


その姿を見た物は皆気付かぬ内に死んでいるとまで言われるジッリョネロの幽霊剣士。

その正体たるや、この生白い幻術と剣術を使う所謂邪道な野郎だが、本当に強いのだから異論もない。


「こちらではあまり見かけないが、あの花は


幻騎士がその白い花を指差し、そう言いかけて言葉を止めた。

お互い、目を合わせる事もなく阿吽の呼吸で建物の影に身を隠す。

今夜は組織のトップ連中が一同に会す、絶好のチャンス。

最小の労働力で最大の効果、我らのボスが望むのはそれだけだ。



抵抗しようと、降伏しようと、ファミリーの島を荒らした落とし前、払う物はその命のみ。

簡単に言えば皆殺しだ。



事前に頭に入れたリストの人間は全て建物の中に納まった。

護衛らしき連中が何人かいるが、問題ない。


何故なら、俺と幻騎士でタッグを組んだ任務の成功率は100%だからだ。


仲間、同士、友、相棒、兄弟、そんな繋がりすら薄っぺらに感じる。

信じている訳でも、認めている訳でもない、ただ、俺達は隣に居て、互いの命の片棒を持ち合いながら、

けして互いに背中を任せる事もせず、吸っては吐く戦場の空気だけを共有していた。

二人を繋ぐ物は一直線に伸びる血の色の道。

そこで手にした安息。


こいつは自分より先には死なない。


それが俺達の絆だった。





γ!」


不意に目に飛び込んで来た、あの白い花の名前を思い出して不注意になっていた。

8割程片付いた所で物影に隠れていた護衛の男の銃が俺目掛けて放たれた事に気付くのが遅れた。

ただの鉛弾でも崩御の炎が間に合わなければ致命傷に成り兼ねない。


まずい。


そう思った瞬間、俺と銃弾のわずかな間に霧の影が割って入った。

その影は実体に戻りながら剣で小さな弾を正確無比に両断した。

しかし、それと同時に実体化した幻騎士は切った弾の弾道を読み切れずに微かにその右頬に切り傷を作った。


「幻騎士!」


俺はその時、初めて奴が傷を負った所を見た。

流れるのは紅い雫。

この男も人間なのだと思った。


幻騎士は何も言わずに前に踏み出し、銃を撃った男を切った。

そして、俺も何も言わずに残りの連中を片っ端から焼き殺していった。


突入から15分。


俺達の足元には紅い血の海が出来ていた。



「大丈夫か?」


俺が頬の傷を指してそういうと幻騎士は鼻で笑う。


「かすり傷だ。」


傷を親指でなぞり、着いた血を舌で舐めとる。

再び傷口からは血が滲んだが、さして気に止める様子もない。

黒い衣服に特注の白いブーツ、白い首が覗く襟元、所々に反り血を浴びた幻騎士はどこか退廃的で危うい。


「この花は


血の海と化した部屋の片隅、ちぎって置かれていた白い花を拾い上げて幻騎士が言う。


「こちらでは白が主流のようだが、」


その花弁に着いた血飛沫を柔らかそうな厚ぼったい唇が嫐る。


死人華は紅いんだ。」


花弁から移った血がまるで紅を注したようにその唇を彩り、悪戯に誘う。


白と黒と紅のコントラスト。


「その紅は死んで逝った者達の流した血で染まったのだと、幼い頃誰かが言っていた


胸の奥の方で鼓動が痛い。

 


「なら、お前とお揃いだな。」


俺は逸る息を抑えるように口を動かし言葉を紡いだ。


「血に濡れて紅く染まる死人華


血の着いたその襟に手を伸ばし、親指でなぞると俺の指先も紅く染まった。


「その紅は人を狂わせるやっぱりお前とお揃いだ。」


俺は染まった指で幻騎士の目元を飾った。

切れ長の目尻に挿した紅はどんな花よりも美しく、怪しげな光を放っていた。


「血の化粧か死者を送る花には打ってつけかもしれん。」


そういって幻騎士は微かに口元を綻ばせると右頬の傷を薬指で拭うと自らの血で俺の唇を彩った。

鉄の香りをまとった筋張った指先。

微かに花の匂いが鼻をくすぐって愛しい指を追い掛けさせる。


ッ!」


気付けば俺は幻騎士の手を掴み、その指に舌を這わせていた。

着いた血を舐め取り、味わうように口に香りを含み、走る衝動に酔いそうだ。

幻騎士は驚いた様子でされるがままに手を差し出して硬直している。

部屋に充満する死の香りが戦闘の興奮と狂気を蘇らせる。

段々と掴んだ手を引き寄せ、指先から手の甲、腕へと愛撫していくと、流石に幻騎士をいたたまれずに腕を振り解どこうとする。

しかし、完全に真っ直ぐに伸びきった状態では筋肉に思うように力が入らない。


γ、ふざけるのも大概にしろ!」


もう片方の手を伸ばし俺の肩を掴む幻騎士。

その腕の力を無視して俺は白い首筋に噛み付いた。


「ッ、」


俄かに甘噛みされて走る痛みに顔を歪める幻騎士。

自分でも何をしているのか解らない。

ただ、その表情に与えられる征服感、込み上げる欲望、沸き立つ狂気が、目の前の男を壊せと囁きかける。


「これだけの人間を殺したんだ、手向けの花がいるんじゃねぇか?」


幻騎士の手から滑り落ちた白い死人華は血溜まりに沈み、真っ赤に染まっていく。


「咲かせてやるよ、血の紅の花を



軽く噛んで動脈を防いでやると幻騎士の顔は酸欠で紅く染まり、ギリギリの所で口を離すとそのまま血溜まりに膝を着いた。


朦朧とする意識の中で、狂った宴が始まる。


血の色にその肌を染め上げ、死者を送る花が咲く。








快楽と屍を糧にして。










end.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


SPECIAL THANKS 555Hit

 

To 浅掛 冥莉

 

 

 

POSTSCRIPT.

 

 

はい、以前から色々と構想を練っては没にして来たγと幻騎士の馴れ初め的な話。

素敵なテキストサイトの管理人様からのリクエストと言う事もあり、ちょっと頑張ってまとめてみました;

色々と他にもシュチュエーションの候補はあったのですが(自棄酒どっこいとかw任務先でばっちょいとかw)

ただ、色々と思案しているうちに、「この二人はあくまで戦友」っていうのがベストだと思い、

結局シリアスにエログロ目指した感じになりました。

成り行き、流され、その場の勢い、バッチ来い!!!!←

勿論良い訳は「魔が差した。」

 

周りは20人位の死体の山と血の海。

世界に二人しか居ないみたいだって、γは言うんだ。

 

幻騎士は全身血まみれ。

 

 

どうやって帰れば良いんだろう。

 

 

 

キリ番ゲッターの浅掛冥莉様のみ、お持ち帰り可です。

こんなで宜しければお持ち帰りください;