夢を見せて


醒めない夢を



夢なら終わらないで


儚い夢よ



在り来りの子守唄が囁いている







もう、目覚めない夢の入口で











Hypnagogic Phenomenon














体が悲鳴を上げていた。


メローネ基地から戦線離脱して帰ってきた揺り篭は心地よく、いつまでも眠っていたかった。


心が悲鳴を上げている。


このまま眠ってしまったら、二度と起きられないと感じていた。


そして、それは予感ではなく確信であった。





体が動かない。







「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ」


傷の治療を終え、麻酔が切れたと同時に体中を激しい痛みが襲った。

今まで生死をさ迷う状態で体の感覚が断絶されていたのが戻ってきたのだ。


「幻騎士!」


貴方の声がする。

痛みに体を掻きむしり、床をはいずり回り、開いた傷口から血が滲み、白い床を汚す。

貴方はそんな俺を見て、怯える獣に触るように手を延ばした。


「あ゛ぁ…ぁ…はぁ…」


俺は貴方の手がこの肩に触れる前に痛みのショックで気を失った。












このまま、眠っていられたなら、醒めない夢を見ていたい。

貴方の腕に抱かれて、何も知らない赤子のように穏やかに。


しかし、俺は知っている。


痛みも、汚れも、悲しみも、欲望も。

この世界には忘れたい物と同じだけ未練が残っていて、眠りを妨げて俺を呼ぶのだ。


そうして夢と現の境目で貴方が問う、


「幻ちゃん、疲れたなら目覚めなくても良いんだよ?」


それでもまだ、何か望むのかと。


「びゃくらん…さま…」


体を巡る傷と縫い目の中に、貴方が付けた傷跡が残っている。

この胸に刻まれた、貴方が俺にくれた最初で最後のプレゼントだった。


「私は貴方の物になりたい…そして、貴方の全てでありたい…」


もう、他の物は何もかも失ってしまった。


「うん。」


俺にとっては貴方が全てだった。


「君は僕の物だよ、幻騎士…」


貴方の指がいつかの日のようにこの傷を卑しくなぞる。


「でも、全てではない…ゴメンね…」


酷い人だ。

そんな事は解っていた、だから嘘でも良かったのだ。

夢でも良いから貴方の全てに成りたかった。


「謝らないで下さい…私の神よ…」


夢なら醒めないで。


「せめて、夢なら…」


貴方は俺だけを愛してくれますか。











「ぁ…」


涙腺がいかれて紅い涙が目頭から零れた。

切れた口の端に伝う雫を貴方が舐め取る、それだけでこの体は至福に共鳴する。


「今、この時だけは僕は君だけの支配者になる、それで満足なんて…」


傷を縫い合わせた糸に爪を立て、微かに摘み上げられ、伝わる違和感に臓腑がよじれる。


「んぁ…」


体を貴方に預けて玩ばれるままに声を紡ぐ事の快楽を、知ってしまえばこの夢は醒めない現実になる。


「愚かで愛しい僕の玩具、それが君だよ。」


貴方はそう囁いて胸の登頂部から脇腹に掛けての起伏を大きく摩る。

ちりちりと迸しる痛みと歯痒い琴線に触れて腰が浮かれているのが自分でも解る。


「幻騎士…」


羞恥も矜持も全て棄ててしまえ、

そう言うように貴方はこの頬に手を掛けて、掬い上げるように深く口づけを与えてくれる。

深く、甘く、何度も、


「ん…はぁ…ぁ…」


息が苦しくなる程、目眩がする程、そのまま空気を失って窒息しても良い程に。

朦朧とし出す意識の中で互いの息の往復だけが熱く、

それ以外は存在しない世界で絡み合う四肢に纏う紗の殻が次第に互いを同一にしていく。

仰ぎ見る尊顔に薄い唇を彩る己の血、体の傷が疼いて滲んだ紅に白い指を嫐らせて、辿る深淵の入口。


「あ…ん…」


下肢に沿って走る悦楽、その先の奈落は満たされる事を望んで悸く。


「お腹が空いたの?仕方のない子だ…」


貴方の指先が淵をなぞる度に空の咥内が熱く脈打って鳴いている。


「…たい、」


貴方にはきっと聞こえていないけれど、紡いだ言葉がこの夢を鮮明にする。

ゆっくりと、緩やかに侵されていく奈落の闇に貴方だけが光を注ぐ事を許された世界。


「ぁ…あぁ…」


もっと奥深くまで照らして、暴いて、光で満たして、

それだけを願って眠れるなら、無くした全てを忘れられる気がする。


それが幻想だとしても。


「可愛い僕の懐刀…鋭い刃は全部偽物…」


貴方の本物の刃に熱い肉壁が絡み付く。

求め、請うほどきつく結ばれて、飲み込む程に深く踏み込まれて、囀る度に貴方が囁く。


「愛してあげる…」


施された美酒に涸れるまで喉を鳴らし、果てるまで焦がされ、夢を見ていた。








愚かな幻想が叶う夢。










「私は貴方になりたい…白蘭様…」










一繋ぎの体に宿る物は何もなくても、その瞬間の幸福を信じて眠る。




夢を見せて


醒めない夢を



夢なら終わらないで


儚い夢よ



恋し貴方が子守唄を囁いている







もう、目覚めない夢の彼方で…









それはただの入眠幻覚現象と知る。










End.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SPECIAL THANKS 5000 Hit

 

To 浅掛 冥莉

 

 

 

POSTSCRIPT.

 

何だかんだでスルーが多い我が家のキリ番を浅掛さんがもらって下さいました!!

本当にいつもお世話になっております;;;;

 

で、今回のキリ番リク『白幻でエロく』との事だったのですが。

基本的に『エロ表現に節度と芸術性を』を掲げる管理人が書くと描写が生ぬるいですねw

スミマセン←

 

てか、本当に、久々に自分、第六巻発動したんですよ!!

 

これ、

本誌で幻騎士過去に大波乱起こる直前(土曜日とか)に原稿書き上げてるんですよw

自分、神かwwwwwww(自画自賛w)

 

文章のイメージがもう、そのまんま、最後の戯れだったので、

正直

泣きそう;;;;;

 

 

心身崩壊して、白蘭以外の宛を無くしてしまった幻騎士と、

愛しい者が壊れていくのに悲しいほど冷静な白蘭。

 

どちらも哀れな存在だと、気づく人は誰もいない。

 

それが二人の理想郷だったんだと、僕は信じています。

 

 

 

キリ番ゲッターの浅掛冥莉様のみ、お持ち帰り可です。

こんなで宜しければお持ち帰りください;